面白い論文を発見。
当事者のインタビューから、性同一性障害コミュニティにおける差別化の現状を分析している。
とあるコミュニティでは、SRS(性別適合手術)までは希望しない人を下位カテゴリーに入れ、性同一性障害カテゴリーの正当なメンバーであるための基準を、コミュニティの中で独自に作り上げているという。
そして、それがトランスジェンダーへの差別につながっている。
コミュニティの中で性同一性障害と認められない人は、“なんちゃって”と呼ばれており、時にはあからさまな批判の対象になる。
“なんちゃって”は、人間としてダメ・社会性がないとされている。
その社会性とは、FTMなら「男であること」と「男だったらするはずのこと/するはずのないこと」と考えられているものの結び付けが、一貫してないということらしい。
たとえば(FTM)、男だからという理由でお茶くみを断り、けれども生理休暇をとり、合コンには男として混ぜてくれということ等。
そういった差別化・批判をするのは、“なんちゃって”と自分が一緒にされたくないという恐れからだという。
つまり、TGやTSのカテゴリーから誰かを排除しようとする当事者間のやりとりが行われており、それにより、正当性を強めようとしているという現状があるそうだ。
ぅーん…同じような悩みを持つ者同士で差別しあうって、悲しいなぁ。
ただでさえ狭い世界なのに。
自分たちだって、社会や周囲に差別・批判されてきたわけじゃん?
なのに何で、自分たちがされてきたことと同じような仕打ちを、仲間にできるんだって思っちゃうんだよね。
そんなんじゃ、せっかく見つけた居場所(コミュニティ)も、居場所じゃなくなっちゃうじゃん…。
なんのためのコミュニティなんだ…。
自分たちの正当性を強めるために、「自分たちとは違うもの」を排除する。
…ぅーん。
それが内部分裂を生み、一部の人が居場所を失い、傷ついたまま新しい居場所を探す。
仲間同士でそんなんしてたら、とてもじゃないが社会から存在を肯定されるようにはならないんじゃないだろうか。
そもそも、性同一性障害か否かを判断するのは、個人・他人ではなく、医師。
他者からの非難を恐れて、自らのセクシュアリティを素直に言うことができない現状が悲しいと思った。
そして、もしかしたらもう性同一性障害だけでなく“性別違和症候群”も視野に入れなきゃならない現状があるのかもしれない。
引用文献;
鶴田幸恵 2008 正当な当事者とは誰か 社会学評論 第59巻1号
*社会学評論は図書館や大学にたいてい置いてあると思うので、興味をもたれた方は読まれてみてはどうでしょうか。
15 comments:
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日本の方が書かれた論文ですか.海外もそうなのでしょうか?
なんか日本人的な考え方かなと思いました. (注:海外至上主義ではありません)
日本の文化背景は「出る杭は打たれる」で,フツーであることがカッコよく,
フツーであることが当たり前で,それ以外は排除するようなところがある気がします.
”なんちゃって”を作ることで自分たちは「フツーの性同一性障害」になるのかなぁ.
どうも(悪い意味での)差別化をする必要性を感じません.
事後報告になりますが,リンクのご承認をいただいたので張らせていただきました.
こちらとしてもリンクは大歓迎です.
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そのコミュニティが、お茶会的なもので
ただ単に居心地のいい場所を求めるためだけのものだったら
意見の合う・合わないで小グループが出来上がったり、仲間はずれが発生するのは
十分考えられる。中学生女子のグループみたいなもんだ。
「難しい事を考えなくても、意見が通る・みんなが賛成してくれる」
という体験は、成長していく上で大切なものだけれど
その体験が乏しいと、同質性を求める心が余計強く働いてしまうんじゃないかと思うよ。
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"なんちゃって"かぁ。カウンセリングでGID間の差別を話したら先生笑ってました。差別があることも知ってたし、他人が他人の生き方や在り方に口出しするのなんて放っておけばいいと言ってました。ぬいぐるみや可愛い物が好きな純男は『女みたい』て言われ、FTMなら『やっぱり女だから』てゞ結局男女差別が強いのは周りの他人よりも自分自身なんじゃ?て思います。人それぞれの環境や事情、思うことは色々あるんだし完璧な男"らしさ"にとらわれすぎかと。男だって長文メールしたり、可愛い服着たり、すぐ泣いたり、甘い物好きだったり…。GID差別以前に男女差別があるように思います。男はしない、女はするって基準もよくわかりませんf^_^;
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■心村狂さん
現状を考えると、八方塞なことも多いですよね…。
僕も基本はネガティブ思考なんで凹むこともしょっちゅうですが、
それでも諦めずに(妥協できる問題は妥協しつつ)やっていこうと思ってます。
お互い、肩の力入れすぎないようにがんばっていきましょう(^^
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■Lokiさん
海外ではどうなんでしょうね?
以前、海外のトランスジェンダー・コミュニティについて聞いたときは、
それほど差別化がひどいとは聞きませんでした(うる覚えですみません…)。
やはり、Lokiさんの仰るように日本特有の「出る杭は打たれる」文化が影響してるんでしょうか。
��「フツーの性同一性障害」
コレになるために他の仲間を犠牲にしているんでしょうね。
第一、フツーって誰が決める基準なんだって思います。笑
区別化と差別化が一緒になっちゃってますよね。
リンクの件、ありがとうございます!
僕もはらせていただきますw
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■RAVENさん
そうですね、仰るようにそのコミュニティがどのような機能を果たすことを目的としているのかでもずいぶん違いますね。
相互援助を目的としているのか、集まってお茶して楽しむことを目的としているのか…etc。
それに、メンバー数が多ければ多いほどグループができあがるもんですから、
それによって発生した内部分裂を防ぐのか放置するのかは、参加者・運営側が対処する問題かもしれません。
同質性を求める心が働くのは、近年の医療中心主義が影響しているのかな?と個人的に思っています。
GIDの医療体制がまだ今のように設置されていなかった頃は、TSもTVもTGも1つのコミュニティの中で差別化されることなく交流していたそうです。
けれど、GIDの医療化が進むと同時にTVや一部のTGを外に追い出し、SRSを希望するTS(=同質な者たち)がコミュを仕切るようになった・・・という経緯があり、少なからずGIDの医療化がコミュニティ内の同質性意識に与えた影響もある気がします。
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■カズキさん
カウンセリングの先生、笑っていらっしゃいましたか。笑
��他人が他人の生き方や在り方に口出しするのなんて放っておけばいい
まさに。
人それぞれ生育歴や環境・思考は違うんだから、その人のことを何も知らない個人が、その人のライフスタイルやジェンダー観を批判するのはお門違いですね。
男・女らしさにとらわれている人ほど、その規範から逸脱する人を中傷するのでしょうね。
一種の「みんなと同じだよ」というアピールなのかなぁ…と思います。
まだまだ性役割規範は存在するし、そこから離れれば居場所がなくなることは誰だって分かってますからね。
��GID差別以前に男女差別があるように思います
それが背景になって、GIDが過剰な男・女らしさにとらわれるんでしょうか。
GIDのジェンダー意識へのこだわりって、時々怖いものがある気がします。
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僕的に、2ちゃんねるについては、たぶん、臆病な人が多いんだと思います。
批判されたり、傷つくのが嫌だから、でも、強く見せたいから、先に攻撃するのかな、、、、と思います。男でも、女でもそういう人いるし・・・・。
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性同一性障害か否かを判断するのは個人や他人では無く医師
という私見の様ですが、その医師の判断(診断)というものが医師によって異なる、
恣意的なものもあるから、ナンチャッテが後を絶たないのではないですかね。
また会社の面接を例に挙げると、面接を受ける人間は当然ながら採用されたいが為、大なり小なり自分を脚色して自らをアピールします。
それを見抜けるか否かは面接者のキャリアによると思いますが、見抜けない様なキャリアしか持ち合わせていない医師においては、
本来性転換を却下される様なレベルのナンチャッテが、パスしてしまうケースもあるのではないかと思います。
実際ビアンサイトに入り浸ったり、写メコンなるものに参加している自称FTМ予備軍の暴走振りは(一部のブログを含め)、
男を舐めていると言うか、冒涜しているとしか思えません。
それが故、真剣に悩んでいる方が誤解を受けているという実状もご推察は致しますが。
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申し訳ありません。もう一度、付け加えで、コメント入れさせてもらいます。
僕の場合、「なんちゃって」の人を見たことがありません。
僕と同じような友人は一人で、他の人は普通の人です。よって、「なんちゃって」の人なんかいるのかな?と不思議です。
普通なら普通に生きていた方がものすごく楽しいとおもいますので・・・・
僕自身、注射や手術などの治療についてするのかしないのか、するのならどういう感じなのかを知りたくて2ちゃんねるを見て、書き込みしました。親切に教えてくれた方も数人いました。
あるコミニティでは、書き込んで、即、「なんちゃって」だと言われました。
僕は、純粋に不思議でした。僕自身は悩んでる段階ではないし傷ついたりすることもなかったですが。。。「なんちゃって」っているのでしょうか・・・・
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■男の戯言さん
コメントありがとうございました。
医師の診断というものが医師によって異なる、恣意的なものもある…というのは仰るとおりだと思います。
性同一性障害か否かを判断するのは個人や他人ではない・・・と書きましたのは、
身内同士での差別化や名称の乱用等に対する懸念の意味での記述です。
��本来性転換を却下される様なレベルのナンチャッテが、パスしてしまうケースも~
そうですね。
だからこそ、性別違和感に関する悩みについては、精神科等の受診だけでなく専門家(ジェンダークリニック)への受診が大事なのではないでしょうか。
性に関する問題に関わってきた専門家であれば、性同一性障害だけでなく様々な可能性を考慮し、
自分史やカウンセリングを通して時間をかけて診てくれるはずです。
なお、性に関する問題は複雑・多様ですし、生涯にわたって変化し得るものです。
したがって、自分で勝手に決め付けてしまうことは、その人の生きる上での選択肢を狭めてしまうことにもなりかねません。
自分で性同一性障害であると自己診断しても、それ以外(例えば、両性役割服装転換症や同性愛)の可能性も十分考えられます。
したがって、やはり自己診断というのものの危険性はちゃんと考えなければならないものでは
ないでしょうか。
しかしながら、医療者側は、個々のケースに応じた柔軟な対応が求めらる点や、
必ずしもガイドライに沿わない周縁群等の存在を考えますと、診断が医師によって異なる、
恣意的なものもあるということも否めないのかもしれません。
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■やんやん さん
コメントありがとうございました。
「なんちゃって」が本当にいるのか否かは分かりませんが、コミュニティ内において、
そのような存在が作り上げられていること、
例え本人がGIDの診断を受けていても、周りがGIDだと認めなければ、
その人は「なんちゃって」にされてしまうことは事実のようです(この論文では)。
したがって、やんやんさんの言うように「なんちゃって」が本当にいるのかは
僕も分かりませんし、不思議です。
ただ、「なんちゃって」を作りあげることによって、TS主義(SRSした人・希望する人だけが真の性同一性障害者だ)以外の人(トランスジェンダー等)を排除しようとする様な動きが未だにある
ことは否めませんし、そのような意識が根本から変わらなければ、
「なんちゃって」と呼ばれる人は生まれ続けるのではいでしょうか。
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ハンネ、憂意から変えました。八方塞がりですよね。私は性別違和感有りまくりだけど女扱いは仕方ないと頭に無理やり入れてます。マイナスの思考になってしまうなぁ…。